誰しも一度は耳にしたことがあるであろう「上野の森美術館」。その別館ギャラリーで、アーティスト映水氏による個展が開催されました。来場客の反応を含め、会場の様子などをお伝えします。
会期:2023年4月20日(木)~26日(水)
会場:上野の森美術館 別館ギャラリー 〒110-0007 東京都台東区上野公園1-2
年間約300万人の憩いの場「上野恩賜公園」
「上野の森美術館」が位置するのは、日本を代表する都市公園、上野恩賜公園(通称:上野公園)の中。この公園、江戸時代は東叡山寛永寺の境内でしたが、明治維新後に官有地となり、大正13年(1924)、宮内省を経て東京市に下賜されたことから「恩賜」の名が付いています。
複数の美術館や博物館、動物園、神社など、歴史的・文化的な施設が集まり、春には約1000本の桜が咲く名所としても知られています。多様な魅力から多くの人に愛される憩いの場で、年間利用者数は約300万人(2021年)にのぼります。

上野の森美術館 別館ギャラリー
上野の森美術館は主に現代アートや公募展、特別展を開催する施設で、その本館とは別に「ギャラリー」と呼ばれる展示スペースが併設されています。個展やグループ展などが開催され、新進気鋭のアーティストの発表の場として活用されています。本館の催事と比べ、アーティストとの距離が近いのが特徴です。

穀雨と恵みの雨 お釈迦様の言葉とフィナーレ
個展を開いたのは、宗派を超えたお寺の天井画や劇画などを納める絵師、映水(えいすい)氏。今を生きる人に響く新しい仏画を模索するアーティストで、国内外で展覧会を開催しています。
今回は、恵みの雨が降る頃を表す二十四節気「穀雨」をテーマに26点を展示。会場を彩る基幹的な作品『蓮華千手観音』をはじめ、『ベビーブッダちゃん』『転法輪印シリーズ』などがお披露目されました。
遠方から大型バスで来場した団体や、氏のSNSのフォロワーらが駆け付け、初日からほぼ満員の時間帯が発生するほどの賑わいに。老若男女、国籍を問わず場者はみな穏やかな表情で、氏が描いた“お釈迦様の言葉”を真剣に受け止めていました。
会期中には、画集の発売記念トーク&サイン会も開催。120冊を超えるオーダーを達成し、グッズ類の販売も好調に推移。氏のご家族を中心に皆一丸となって、購入者への対応にあたっていました。
個展が始まってから一度も降らなかった雨が、最終日にまるでフィナーレを祝うように上野の森に舞い降りました。氏が作品を通じて伝えたやすらぎや安心感は人々にとっての「穀雨」。来場者はたっぷりと水分と栄養を蓄え、力強く次なるステージへと進んでいるに違いありません。