デザイナーとしてのキャリアを背景に、グラフィックに金属という素材を融合させた、インスタレーション的ともいえる独自の表現を展開している若松貴志氏。4月、上野恩賜公園の中核機関の一つである「上野の森美術館」で開催され、1000名を超える方が訪れた個展の様子を、レポートします。
個展名:若松 貴志 個展 『きらめく金属の描線 美のシグナル』
会期:2025年4月15日(火)~21日(月)
会場:上野の森美術館 別館ギャラリー
日常の美に出合う、非日常の7日間
明治9年以来の歴史を持つ、日本を代表する「ロイヤルミュージアム」である「上野の森美術館」。その別館ギャラリーにおいて、若松貴志氏の個展が開催されました。
2019年フランスでの展示を皮切りに、シンガポール、ドバイ、ニューヨークなど各国で話題を呼び、昨年は国際的なアートフェアVOLTA BASEL 2024にも出展した気鋭のアーティストの、全16点が展示された当展示会。
独自の表現方法で日常に潜む美を切り取った作品が、上野の森できらめきました。

空間まるごとで演出する作品世界
グラフィックと金属傷による細く鋭い描線を組み合わせ、水、空気の揺らめき、音など、私たちの身の回りにさざめく様々な現象の美しさを切り取って提示する若松氏の表現。ギャラリーに差し込む光の揺らめきと共に、空間ごと作品世界に包みこまれました。
元アートバイヤーだったという方は、若松氏の作品を「ノージェンダーで、国、環境関係なく、いろんな人が楽しめる作品だ」と絶賛。まさしくアーティストが表現したいことが伝わっていることを確信したコメントでした。

インバウンドでにぎわう東京での開催
人出を誘う春うららかな恩賜公園に位置するギャラリーは、外国人観光客から学生、仕事の合間と思われるスーツ姿の方など、様々な方でにぎわいました。
作品の魅力に惹きつけられて入場された方の中には、日本語・英語表記のパネルをスマートフォンで自国語に翻訳しながら、真剣に鑑賞している方も多く見られました。
訪日外国人に向けても情報発信
文化的背景を問わずに楽しむことができる若松氏のアート。幅広い方に情報が届くよう、美術に興味がある方、お出かけ予定を探している方、訪日中の外国人など、複数のターゲットに向けて、日本語・英語で開催情報を発信しました。

来場者の声
・アートは自由なんだな、と改めて感じました。全て素敵な作品で、心が豊かになりました。
・このような作品を見るのは初めてです。古典的な技法が使われている、モダンな作品です。表現力があり、印象的でした。
・水の中にいるような、雨降る森の中にいるような、神秘的な作品で素敵でした。
・まるで長い昼寝から目覚めた時や、木々とまぶたを通して太陽の光を感じるような感覚でした。
・見る時間や天気によって印象が変わりそうです。金属なのに、温かみを感じました。
・線が光っていて、とても美しいと思いました。目に見えない風を見ている気分でした。
・光と風が表現されていて、ステキです!!日常の中の一瞬を切り取って表現されているので、どこか自分のある日常の一コマがそこに表現されているようで、胸にぐっとくるものがありました。私も、そんな一瞬を忘れずにいられるのですが、こんな形で表現して下さり、嬉しいです。