パリ個展パリ・サンジェルマン・デ・プレ地区に位置するエチエンヌ・ドゥ・コーザン・ギャラリーで、2022年11月、書家・瀬戸秀穂氏と瀬戸舟穂氏による個展が開催されました。伝統と現代、東洋と西洋が交差する空間に、日本の書がもつ精神性と美意識が静かに広がり、来場者の心に深い印象を刻みました。
会期:2022年11月3日(木)~9日(水)
会場:Galerie Etienne de Causans(25, rue deSeine, 75006 Paris, France)
芸術と文化の交差点——エチエンヌ・ドゥ・コーザン・ギャラリー
パリの中心、サンジェルマン・デ・プレ地区。石畳の街並みに洗練が溶け込むこの地に、エチエンヌ・ドゥ・コーザン・ギャラリーは静かに佇んでいます。
セーヌ通り沿いの歴史ある建物の一角に構える同ギャラリーは、ルーヴルやボザール(美術学校)にも近く、パリを訪れる芸術家や知識人たちが自然と集う場所です。伝統と現代、東洋と西洋をつなぐキュレーションは高く評価され、世界中の美術ファンやコレクター、文化メディアから注目を集めています。
オーナーであるエチエンヌ・ドゥ・コーザン氏は、日本文化への造詣も深く、数多くの国際展覧会を通して日仏の芸術交流に貢献。知と美が出会うこの空間は、アカデミックな来訪者にも多く支持され、新たな芸術の出発点として人々を魅了し続けています。

清らかに香り立つ美意識
そんなエチエンヌ・ドゥ・コーザン・ギャラリーで、2022年11月、瀬戸秀穂氏・瀬戸舟穂氏 パリ個展が開催されました。
文化と芸術の交差点ともいえるこの場所で、多くの来場者が日本の伝統芸術・書の世界に触れる貴重な機会となりました。
本展の中心となったのは、瀬戸舟穂氏の父であり師でもある、故・瀬戸秀穂氏の作品群。合同制作2点を含む多数の作品が展示され、長年にわたって世界を舞台に活躍した秀穂氏の深い美意識が、空間を満たしました。
瀬戸舟穂氏はこう語ります。
「書作品は、揮毫した後、落款、表装という複数の工程を経て、ようやく完成します。そこには多くの職人たちの技術と想いが込められているのです。」
その言葉通り、作品の一つひとつに丁寧な手仕事と精神性が宿り、来場者たちを静かに、そして深く魅了しました。

来場者の声
展覧会を訪れた各界の来場者からは、作品に対する感動の声が数多く寄せられました。
ティボ・ジョセット氏(アート紙「ユニベール・デ・ザール」編集局長)
「瀬戸氏の作品には、他の書作品とは異なる独自の美しさと柔らかさがあります。エネルギッシュでありながら落ち着きも感じる不思議な作品『陀仏』、非常に力強い一文字の『音』、そして美しさが際立つ『雲海』が特に印象的でした。軸装も素晴らしく、細やかな感性が伝わってきます。」
ヅクロ・ブリジット氏(元ルーヴル美術館学芸員) 「とても美しい作品ばかりでした。言葉の意味や背景について、作家ご本人と直接お話をしてみたかったです。」
作品『○字による人の一生』を鑑賞していた来場者 「“〇”というモチーフから、輪廻や人生の流れが感じられました。上から下への線は誕生から老いへの道を表しているのでしょうか。若いころのエネルギー、成熟期の安定、そして老いと共に訪れる調和。薄くなっていく線から、人としての角が取れていくようにも見えます。内側の白い空間には、すべてと一体化していくような静けさを感じました。」
スタッフに『陀仏』の意味を尋ねた来場者 「どの作品も、言葉の意味をもっと深く理解したくなりました。」

美術史家/美術評論家のコメント
美術史家/美術評論家エリック・モンサンジョンからも、本展への高い評価が寄せられています。
「瀬戸舟穂氏とお父様(瀬戸秀穂氏)の作品は、“象徴”と“創造”によって構築されており、繊細なニュアンス、そして正確性によって生みだされるその美しさは圧巻です。とても優雅で果てのない魅力に溢れています。素晴らしい親子の共演でした。」
個展を通じて、書がただの文字表現ではなく、時間や精神、そして人生そのものを映し出すものであることを、改めて多くの人々が実感しました。パリの中心で、日本の精神文化が確かに息づいていた瞬間でした。
