色彩と光が届ける『一瞬の美しさ』——若松貴志氏パリ個展


伝統と文化が息づくパリ・サンジェルマン・デ・プレ。その中心に佇む「エチエンヌ・ドゥ・コーザン・ギャラリー」で、画家・若松貴志氏による個展が開催されました。
動物や自然、現象に対して分け隔てなく向き合う若松氏のまなざしは、鮮やかな色彩と繊細な光の表現となって画面に息づき、訪れた人々の心を静かに震わせました。
会期:2022年10月18日(火)~24日(月)
会場:エチエンヌ・ドゥ・コーザン・ギャラリー(25, rue de Seine, 75006 Paris, France)
芸術、歴史、洗練された文化が共存するパリ。
その中でも、知性と美意識が交差するサンジェルマン・デ・プレ地区に佇むのが、「エチエンヌ・ドゥ・コーザン・ギャラリー」です。セーヌ通りに面し、ルーヴル美術館からも徒歩圏内という、まさにアートと文化の中心地に位置するこのギャラリーは、国際色豊かなアーティストたちの発表の場として高い評価を得ています。重厚な歴史を感じさせる街並みに溶け込むその空間には、世界中のコレクターや美術関係者が訪れ、アートを通じた対話が日々生まれています。
オーナーのエチエンヌ・ドゥ・コーザン氏は、日本とフランスの文化的な橋渡しにも力を注いでおり、日本美術や工芸に対する関心の高い知的な来場者層が厚いのも特徴です。芸術を深く味わうにふさわしいロケーションと気品に満ちたキュレーション。その両方を兼ね備えたギャラリーで、2022年10月、若松貴志氏の個展が開かれました。
輝きと質感、そして鮮やかな色彩からなる光の表現が高く評価されるアーティスト・若松貴志氏による個展が開催されました。
動物、人間、モノ、そしてあらゆる現象に対して、分け隔てのないまなざしを注ぐ若松氏の作品は、輝きと質感に満ち、見る者の心に優しく触れます。
今回の個展では、具象的なモチーフを用いた初期の代表作から、近年取り組んでいる抽象的表現を内包した最新作まで、計18点を展示。どの作品にも共通しているのは、世界そのものを肯定するような温かな眼差しと、色彩が放つ静かな力強さでした。
訪れた人々は、時の流れに身を委ねるように、ひとつひとつの作品の前で立ち止まり、光と色彩が語りかけてくる静かなメッセージに耳を傾けていました。
作品を購入したアートコレクターは、「作品の前に立っただけで、いつの間にかその中にいるような感覚を覚えました。とても美しい青だと思います。若松さんの作品には心が震えました」と語ります。
また、元ルーヴル美術館の学芸員からは「心からのブラボーを贈ります」という称賛の言葉が、スペインから訪れた写真家からは「高度なテクニックに圧倒されました。とても美しい作品です」といった声が寄せられるなど、アート界からも高い評価を集めました。
会場で寄せられたアンケートからは、「とても成功している」「森や月がリアルに感じられ、風もやわらかく、すぐ近くを流れているように感じた」「若松さんの作品を通して、日本人の視点や感性を少し体験できた気がする」といった感想が並びました。
夢で見た美しい記憶、若松貴志氏の作品はそんな詩的な風景が現実の世界にも存在することを伝えてくれています。
それらもすべて、彼が色彩と光を完全に把握しているからに違いありません。
ご本人の温かいお人柄もまた色濃く反映されています。
(文化ジャーナリスト/コラムニスト オディール・ルフラン氏)