書籍やカタログとして、手に取れる形になっていることで、それ自体が一つの作品になります。
SNSやウェブサイトなど、気軽に情報に触れられる現代においても、紙媒体の「きちんと感」は健在。信頼性や高級感の演出には欠かせないツールです。
数多くのツール作成を手掛けてきたデザイナー、ライターが制作を社内で一括して対応。狙いを効果的に実現するためのノウハウがあります。
伝統と現代の感性が静かに交差するモノクロームの世界。 宮内勝廣氏の作品集「舞妓つれづれ」は、祇園や宮川町など京都の町並みに息づく芸舞妓の日常を、詩的な視点で切り取った珠玉の写真群です。 そこに描かれるのは、華やかな舞台姿ではなく、ふとした瞬間に垣間見える素顔。 日差しと影が織りなす情緒、繊細な所作やまなざしの中に、見る者は時を忘れ、幻想的な世界へと誘われます。 すべての構図とアングルに意味が宿り、不要なものをそぎ落とした画面には、写真でしか表せない美が際立ちます。 H.C.=ブレッソンの哲学を胸に、鋭い観察眼と研ぎ澄まされた感性で「決定的瞬間」をとらえる宮内氏のまなざし。そのレンズを通して私たちは、芸舞妓という存在の奥にある、より深く、豊かな人間の美しさと出会うことができます。
豊かな色彩と緻密な構図によって紡がれた、吉川和子氏による魅惑の芸術世界を堪能できる一冊です。 肖像、風景、静物とジャンルを横断しながらも、すべての作品に通底するのは、観る者の想像力をかき立てる圧倒的な構成力と情感。 とりわけ静物画においては、椅子や花瓶、花束などのモチーフが、それぞれ強い個性と物語を帯びて画面に存在し、単なる写実にとどまらない心象風景を描き出します。 構図に込められた意識と空間のとらえ方は、マティスを思わせる感性に通じ、織物の折り目や絨毯の文様までが、画面に奥行きと豊かさを与えています。 花々は詩情をたたえ、人物の不在すらも空間の一部として語りかけてくる。静かに、しかし確かに、観る者の心をとらえる𠮷川氏の作品は、まさに“芸術の輝き”そのものです。
洋画家・井波谷栄氏による作品集『光彩』は、1990年からの画業の中から未発表作品を厳選し、色彩豊かな世界を紡ぎ出しています。花咲く草原や人々の営み、街の風景など、日常の中にある美しさを鋭くとらえ、あたたかな色と繊細な構図で描かれた作品群には、命や自然への深い慈しみがあふれます。海外でも高く評価された国際的感性と、日本的美意識が響き合い、観る者の心にやさしく寄り添う一冊です。生きることを芸術に昇華させた、井波谷氏の静かな情熱と希望の光が詰まっています。
本作品集は、伝統的な日本の美を現代に昇華させたアーティスト・鮎澤まゆみによる珠玉の押し絵作品を一堂に収めた、貴重な記録です。押し絵・木目込み人形・衣裳人形の師範として長年研鑽を積み、国内外の展覧会で高く評価されてきた鮎澤氏。その表現は、古典的な形式の枠を超え、登場人物の内面や情感を映し出す詩的な世界観を確立しています。歌舞伎や能、平安の雅な情景、たおやかな女性像――そのすべてが、彼女の繊細な手仕事と深い精神性によって立体的に立ち現れます。きらびやかな色彩と複雑な布の重なりに宿る技巧だけでなく、魂を宿すような創作の姿勢が貫かれており、ページをめくるたびにその緊張感と美しさに引き込まれることでしょう。日本の精神文化を発信し、多くの来場者の心を打った芸術の力が、本書からも確かに感じられます。本作品集は、日本文化の美と精神を未来へ手渡す一冊であり、世界中のアートファンや日本文化愛好家にとってもかけがえのない出会いとなることでしょう。
生命を持つかのようなストロークから生み出される、深く鮮やかな精神性。書道の師範としての経歴を活かして、東洋の象形文字をひとつのベースに自身の絵画世界を築き上げてきた画家です。エルミタージュ美術館学芸員による評論文が作品の鑑賞価値を高めます。
50余年にわたって禅宗の開祖・達磨大師を描き続けてきた画僧の代表作、約40点を収録。
抽象画を中心に36点の油彩を収載。青春時代に大病を患ったことが制作の原動力になっているという画家の作品は、カラフルで生きる活力に満ち溢れています。
無垢で多彩な筆運びが、ジャパンエキスポをはじめとする海外の美術展でも大人気の書家。茶人でもある彼女は、床の間にかける書から生け花まで、もてなす客人に応じて茶席にさまざまな工夫を凝らすといいます
「省胎七宝」は、日本で独自に発展した希少な伝統工芸技法です。省胎とは「胎(土台)を省く」の意で、七宝釉と銀線で模様を描いて焼き上げたあと、土台である銅版を薬品で溶かし去る工程を指します。
身近な野山に咲く四季折々の花を優雅な筆使いと柔らかな色彩で情緒豊かに描かれた墨彩画。
国内外で48年にわたり独自の表現を追求してきた髙原普門の創作の軌跡を収めた一冊。 「守破離」と「温故創新」をテーマに、侘び寂の伝統美を礎としながらも、常に新たな形態に挑み続けてきたその姿勢が、作品の随所に息づいています。 本書は、パリ・サンジェルマン・デ・プレにて開催される個展に合わせて編まれたもので、在フランス日本国大使館や観光庁などの後援を得た公式プログラムの一環として出版されました。
庄司はるみ氏による歌集。本書は、著者が自身の年齢を意識し始めたことをきっかけに、最終歌集として自らまとめることを決意したものです。ある日、もし自分が亡くなった後に遺歌集を出してほしいと娘に頼んだところ、「自分にはそんな力はない」と断られ、自身で整理する必要性を感じました。そこで、前歌集『青い睡蓮』以降の作品を見返してみたものの、内容に納得できず、自らの老いと向き合うことになりました。夫の死や年齢を重ねたことによる心情が色濃く表れた作品に迷いを覚えつつも、「短歌を続けてきてよかった」という実感が深まる中で、これらの歌をひとつの節目としてまとめるに至った経緯があります。