【事例紹介】「ジャパンエキスポに出ています」の一言で、海外の商談が動いた|富士マーチャンダイズ




「自社の商品を海外に売りたい」。そう考えて展示会に出てみたものの、その場は盛り上がったのに後が続かなかった——そんな経験を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2026年7月、フランス・パリで開催されたJapan Expo Paris。ジャパンプロモーションが運営する日本文化パビリオン「WABI SABI」に、和食器や和雑貨を扱う富士マーチャンダイズが初めて出展しました。
同社が立てたのは、「ブース販売」と「現地企業への営業」という二方向の戦略でした。何が効いて、何につまずいたのか。担当の川地さんにお話を伺いました。
陶磁器や包丁などの家庭用品、和雑貨を世界20か国以上へ輸出している、株式会社富士マーチャンダイズ。1974年に横浜で創業した貿易商社です。
これまでに中国やアメリカで開かれる、テーブルウェアや陶器を扱う企業が集まるBtoBの見本市に出展してきました。商談用の商品カタログはもちろん、英語で商談できるスタッフもそろっています。
一方で、海外で一般の消費者に直接売るイベントに出るのは、今回のJapan Expoが初めてでした。

BtoBの見本市に出展するなかで、川地さんが感じていたことがありました。その場の商談は盛り上がるのに、後が続かないことです。
「商談をしに来る人ばかりなので、話はすごく盛り上がるんです。じゃあ次回見積もりを出すね、と。でも相手はいろんなライバル商社も見ているので、抜けていってしまう部分がある」
転機は今年の4月。「Instagramで、イギリスでやっている日本文化のイベントの動画がたまたま流れてきたんです。空手をやっていたり、書道をやっていたりする中に、お茶碗がぶわっと並んでいるブースが1軒だけあって。あ、こういうので出展できるんだって」
一般の消費者に直接売るイベントに、自社の扱う食器を並べられる。しかも、そこに出している同業はほとんどいない。そう気づいてから、欧州最大の日本文化イベントであるジャパンエキスポを探しあて、出展を決定。知ってから決めるまで、1か月もかかりませんでした。

ブースでの販売と並行して進めた、現地企業への営業で効いたのが、Japan Expoの名前でした。
「一番よかったのは、『ジャパンエキスポに出ている会社です』と言えたことでした。どこの会社かも分からないところがいきなり来るのと違って、有名イベントに出展していると、ある程度ちゃんとした会社だと思ってもらえる。『ジャパンエキスポに来ている方だったら、ぜひどうぞ』という感じで話を聞いてもらえました。要は、広告みたいな形で使わせてもらった部分はあります」
日本から突然電話をかけて商品を売り込むのと、いま現地の会場に出ている会社として連絡するのとでは、受け取られ方が変わる。出展そのものが、名刺の役割を果たしました。
では、その電話はどうやってかけたのでしょうか。
「インターネット等で調べて、顧客になりえそうなところをひたすらピックアップ。100件のリストを作り、上から順番に、片っ端から電話しました」
精度の高いリストを時間をかけて作るのではなく、手元にある材料ですぐ動く。渡航前の限られた時間で、100件に当たりきりました。
意外だったのは、言葉の壁がほとんどなかったことでした。
「フランスの会社は英語を嫌がるイメージがあったんですけど、日本の商品を扱っているお店なので、窓口の方が日本人ということも多かったですし、フランスの方でも英語が通じるところばかりでした。イメージはすごく変わりました」

営業先は会場の外だけではありませんでした。
Japan Expoの会場には、WABI SABIパビリオンの外にも、フランスで日本の雑貨を扱う事業者がいくつも出展しています。来場者に商品を売る場であると同時に、彼らのような事業者と直接会える場でもある。それが、日本文化を掲げた大規模イベントならではの環境でした。ジャパンプロモーションでも、出展企業には会場内をまわることをおすすめしています。
現在、何件かの引き合いが進んでいます。
「陶器を触ったことがない方でも、日本の文化が好きなお店なら、こういうお皿も売れますよと提案すればつながっていくんじゃないかと思って」
これまで出てきたBtoBの見本市との違いも、はっきり感じたといいます。
「ジャパンエキスポのほうがライバルが少ないなというのは思いましたね」
商談相手が集まる場所ではない分、一件ずつ声をかける必要はあります。ただ、競合が少ないため、かけた手間はそのまま次につながりました。

来場者に足を止めてもらうために、同社が用意したのがお箸のプレゼントです。
商品を買ってくれた人と、Instagramのアカウントを登録してくれた人に、好きなお箸を1膳選んでもらう。狙いは、単なるサービスではありませんでした。
「どれにしようかと、みんなすごく悩んで選んでくれるんです。できるだけ足を止めてもらうことで、混んでいる雰囲気を出したかった」
人が立ち止まっているブースには、さらに人が寄ってきます。お箸を選ぶ数十秒が、その呼び水になりました。
会期中、Instagramのフォロワーは200〜300人増えました。ただし川地さんは、成果はこれからだと見ています。
「SNS運用までしっかりできていない部分もあります。反響があったかと言われると、これからですね」

商品としても「意外と人気だった」というお箸。会場での売れ筋は、想定と違いました。
驚いたのはご飯茶碗です。日本人やアジア圏の人が使うものだと思っていた商品が、真っ先に売れていきます。
「一番最初に売れたんですけど、アジア圏の方に限らず、いろんな国の方が買っていったんですよ。これはまだまだ売れるな、という手応えはすごくありました」
ほかにも、売れないと思っていた商品が動いたり、期待していた商品が動かなかったり。想定との差はいくつもありました。
日本側が「海外で受けそう」と考える商品と、現地の人が実際に選ぶ商品は、思っていたよりずれている。そのずれは、売り場に立って初めて見えるものです。

実際に出展したからこそ分かった課題もありました。
1つめは、商品の運び方です。
今回は商品を4人でキャリーケース9個を運びました。キャリーケース1個あたりの重量制限に合わせると、重い陶器は半分ほどしか積めません。残った隙間は、和紙の置物など軽いもので埋めました。
ところが、やはりよく売れたのは陶器のほう。「陶器ばかりだとすぐ重量を超えてしまうので、緩衝材みたいな形で置物を入れたんですけど、こちらは陶器ほど売り上げが伸びず……。次に出るとしたら、先に送ってしまうのも手かなと」
商品を現地へ事前に発送するか、手荷物で運ぶか。費用面のメリットを取るか、重量の制限を受け入れるか。ここは慎重に検討したいポイントです。
2つめは、商品価格の把握です。
商品の種類が多く、価格の把握が追いつきませんでした。
「正直、値段の件でパニックになることが多かったんです。種類が多すぎて、その場の勢いで価格を伝えてしまうことも多かった。価格の部分だけは、もうちょっとちゃんとやっておけばよかった」
売り場が忙しすぎたゆえの、うれしい悲鳴でもありました。とはいえ、商品点数が多い場合、ある程度自分でもわかりやすいように整理しておくとスムーズです。

今回の出展を、川地さんはこう総括します。
「結局、BtoBのお客さんが売る相手も、個人のお客さんなわけですから。まずBtoCで売れるものを作ってから、Bに提案するほうが、意外と近道なんじゃないかと思いました」
現地で実際に売れたという事実は、そのまま「これはお客さんに売れます」という材料になります。同社はいま、今回の反応をもとに新しいデザインの準備を進めています。
「日本の文化なのに、フランスの方が運営していて、フランスの方に好まれている。不思議な空間でした。これだけ日本文化が広がっているということは、まだ試せることがいっぱいあるなと、改めて思いましたね」
情報を得てから素早く出展を決め、会期中も現場で判断を重ねた富士マーチャンダイズ。海外の販路開拓は、綿密な計画を立ててから動くだけが道ではありません。まず現地で商品を見てもらい、その反応をもとに次を決めていく。今回の出展は、そんな進め方があることを示しています。

ジャパンプロモーションでは、Japan Expo ParisのWABI SABIパビリオンをはじめ、海外での販路開拓を目指す企業の出展をサポートしています。出展に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。