ジャパンエキスポ「WABI SABI」   フランス・パリを基点に日本文化を世界へ

【事例紹介】200年の歴史をもつ日本茶専門店 124年ぶりに再び世界に挑む

2024.4.3
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現在の「東京繁田園茶舗阿佐ヶ谷本店」の外観。開いた扉の両脇に、商品のほか抹茶アイスクリームや日本茶ののぼりが立っている

近年は急須を知らない子どもがいると聞き、驚きました。「ペットボトルが普及して、お茶を飲むスタイルが変わってきたということですよね」と言いながら、温めた湯飲みに、小ぶりの急須から手際よくお茶を注ぐ繁田穣(はんだ・みのる)さん。東京・阿佐ヶ谷にある「東京繁田園茶舗」本店の2階で、お茶の古今東西と海外進出についてお話を伺いました。

変わらないお茶と変わるお茶

そうして差し出されたお茶を口に含むと、舌で転がしたくなるような丸みのある味わいが広がりました。飲み込めば青く豊かな香りが鼻を抜け、単なる水分補給ではなく、お茶と向き合いたくなる質の良さを感じます。
「小学校でお茶教室を開くと、お茶が温かいことに驚く子もいるんですよ」
穏やかな口調で笑いながら話す穣さんは、「東京繁田園茶舗」の3代目。とはいえ、繁田家の歴史をさかのぼれば古く、江戸時代から埼玉県などで栄えている一族です。
狭山市に茶園「繁田園」が造られたのが1815年のこと。海外の人たちにも本当の日本茶の味を知ってほしい、自分たちで直接いいお茶を届けたいと1875年に日本初の製茶の直輸出会社「狭山会社」を設立し、後年はシカゴ万博(1893年)にも出展。パリ万博(1900年)では大賞牌も受賞しています。
ところが戦争が始まり、日本茶輸出の夢は頓挫。繁田家が持っていた一番大きな茶畑も国に徴発され、航空士官学校の飛行訓練場になってしまいました。

モノクロ写真。開業初期(昭和30年ごろ)の「東京繁田園茶舗阿佐ヶ谷本店」の外観。

開業初期の「東京繁田園茶舗阿佐ヶ谷本店」

1947年、穣さんの祖父は「モノはなくなったがお茶づくりの技術はある」と、阿佐ヶ谷に「東京繁田園茶舗」を開店。津々浦々で有機栽培の茶園を開く手伝いや、お茶工場の開設などに携わり、生産者と二人三脚でお茶をつくりながら、東京の消費者に届けました。

「丁寧」な作業が味への付加価値に

では現在、東京繁田園茶舗が取り扱っているのはどういうお茶なのでしょうか。
「ペットボトルの登場で急須を使わなくなったり、産直人気が高まって専門店で買わなくなったり。こうした市況において、『問屋さんから完成品を仕入れて売る』という従来型の商売の意味がなくなってきました。そこで、私たちの技術が付加価値となるような商品づくりをしています」
静岡、京都、福岡、鹿児島――お茶の名産地で買い付けた茶葉を、京都の宇治田原町にある工場に運び、独自の「仕上げ加工」を施します。具体的には大きく2つの工程がありました。
1つは茶葉を「磨く」作業。茶葉は芽、茎、粉、毛羽などが混在しているため何度も選別し、場合によっては切断しながら種類を揃えます。
もう1つが「火入れ」。茶葉に熱を加えて乾燥させることで、優しく甘い香りを引き出します。
「香りは強ければいいというものではなく、茶葉を見極め、特性を残しながら香りを閉じ込める必要があります」
その見極めのために、加熱温度を1度単位でチェックしていくというオリジナルの火入れがあるのだと、嬉しそうに話す穣さん。
「127度、128度、129度、130度……1つずつチェックしていくんです。こういった手間のかかる作業はあまり知られていないかもしれません」

1度の違いで熱した茶葉が並び、それぞれの香りを確かめている様子(繁田穣さんのnoteから)

1度違いで火を入れた茶葉の香りを確認(繁田穣さんのnoteから)

広い間口で伝統に引き付ける

「日本茶専門店とは何かと聞かれたら、こういう昔ながらの丁寧な作り方や文化を含めて提供する、ということでしょうか。ただ、手間がかかっているからといって高価格にしてしまうと、多くのお客さんにお届けできないため、お求めやすくする工夫をしています。たとえば30gの手軽なサイズにしたり、かわいらしいパッケージにしたり、自分の好みが見つけられるような定期便にしたり。直観的に選んでもらったその先に、『聞いてみると、実はこだわりがあった』と感じてもらえれば」

ティーバッグの小分けパッケージ。パンダのイラストが描いてあるものや、かわいらしいデザイン性に富んだものばかり

ティーバッグの一部。かわいらしい見た目で本格的な味わい

穣さんが事業を受け継いだのは2021年のこと。それまでは20年間、大手百貨店で日本の食材を海外に販売する仕事をしていました。さすが、顧客のニーズを捉えることも“お茶の子さいさい”ということでしょうか。
そこで、お話を聞いていた部屋の扉が空きました。
「お待たせしました!」

海外の日本人気とパリの特別感

元気よく登場したのは、穣さんのいとこで、東京繁田園茶舗の広報分野などを担当している藤田真理子さん。ティーバッグのかわいらしいパッケージデザインなども藤田さんのアイデアです。
同店は今年7月に開催される「ジャパンエキスポ・パリ2024」への出店が決まりました。繁田家の先代がパリ万博に出展して124年。あらためて世界に挑むきっかけについて、藤田さんに聞きました。
「個人的な話ですが、以前出版社で漫画の翻訳版権などを海外の出版社に売る仕事をしていました。海外のブックフェアやアニメエキスポなどにも何度か出張に行っていたので、イベントの熱気や雰囲気は知っていたんです。中でもパリのジャパンエキスポは、知名度が高く憧れもあったので、出展の話があった時に『これは出たい』と思いました。特にフランスの方は、アートや“ジャパン的”な物に対する感度がヨーロッパの中でも高い印象があり、日本茶との親和性も高いのではないかと感じました」

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体験を通じて伝統も海外へ

そんな熱気の中での挑戦。東京繁田園茶舗のブースは、どのような内容になる予定ですか。
「販売や試飲をするだけではなく、たとえばワークショップという形で、お抹茶を点てたり急須でお茶を煎れたり、日本茶の文化を体験できるようなブースにもしたいと考えています。「海外には、緑茶はあるけど正しい淹れ方が広まっていない」という声もあったので、体験を一緒に持っていくことで、日本茶の本当の美味しさをお伝えできるのではないかと期待しています」(藤田さん)
繁田園に受け継がれてきた技術を、海外の人にダイレクトに感じてもらうまさに絶好の機会です。ジャパンエキスポではこれまでにもお茶の試飲はありましたが、ゲストに煎れてもらう体験型は初めて。話題を呼びそうです。

ジャパンプロモーションでは、海外進出の一翼を担っています。ご興味をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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